「思い出した…あの日も最後に観覧車乗ったんだよね。だから懐かしい感じがしたんだ」

「そうそう。あのとき朱里は外の景色に夢中になってて。俺は、楽しそうな朱里の横顔をずっと見てた」

「そうだったの…?」

「うん。どんな景色よりも朱里だけを見ていたかったから」



たっくん、おかしいかな。

あのとき夢中になっていた景色よりも、私も今はたっくんだけを見ていたい、って思うのは。

子供の頃には広く感じていたゴンドラ内。

それが今では狭く感じてしまうほど…私達、成長したんだね。



「あ…もうすぐ頂上だよ」

「うん、そうだね」



向かいに座っていたたっくんは静かに立ち上がると、何故かそのまま私の隣に腰掛ける。

正直、この空間で隣り合わせは相当窮屈で密着度が半端じゃなくて、たっくんに聞こえてしまうんじゃないかと思うくらい胸がドキドキしていた。