『朱里、俺は大丈夫だから一緒に乗ろ』
優しいたっくんは“NO”とは言わず、私の我儘を許してくれた。気が済むまでとことん付き合ってくれた。
だけど、さすがに10回以上乗り続けるとたっくんからは笑顔が消え、フラフラになっちゃって。
何度目かのジェットコースターを乗り終えた時、近くにあるベンチにドサッと倒れ込んだたっくんを見て、そこで初めて無理をさせていたことに気付いたんだ。
「あの時の朱里、ベンチの前にしゃがみ込んで俺の手を握りながらボロボロ泣いて。それで何度も『ごめんね、ごめんね』って謝ってたよね」
「だって…私が我儘言ったせいで、たっくんに無理させちゃったから…」
「ううん。あれはさ、俺の意地だったから」
「意地?」
「そう。朱里にいいとこ見せたくてカッコつけてただけだよ。で、あのザマってわけ。情けないよね」
「そんなこと…」
「でもあの時、俺のために泣く朱里が可愛くて…俺の手を握ってくれたことが死ぬほど嬉しかった」