「はぁ…無事に戻ってこれて良かった…」
恐怖のお化け屋敷から脱出できた私の開口一番がそれだった。
あれからお化け屋敷を出るまでの間、私はたっくんから1ミリも離れることなく寄り添うように歩いた。
時に悲鳴をあげながら、時に気を失いそうになりながら、出口までの道をなんとか進み続けて。
怖すぎて自然と背中に冷や汗がツーッと伝えば、その感触にすらビクッとする始末。
だから出口が見えた時なんて、安堵して思わず目が潤んでしまった。
けれど隣にいるたっくんは、どうやら私とは全く違う心情らしく…
その証拠に、たっくんは“不満”という二文字がピッタリ当てはまるような顔をしていた。
「えー…もう終わり?」
「なんでそんなに残念そうなの…?」
「だってさ、ここにいれば朱里がたくさんギューしてくれるでしょ?」
楽しそうに言いながら、「幸せだったな」と付け加えるたっくんに唖然とした。
お化け屋敷に入って幸せだなんて、一体どんな心臓してるんだろう…
私なんて、お化け屋敷を引きずって未だにたっくんから離れられないというのに。