何も言わないから、和食の気分じゃなかったのかもしれない。

そう思ったのと同時に聞こえてきたのはシャッター音だった。

反応するように再び振り向けば、私の後ろにいるたっくんが携帯をこちらに向けている姿が視界に入る。


「な、何撮ったの…?」

「ん?朱里の後ろ姿」

「え?なんでそんなの…」

「だって俺のシャツ着てキッチンに立ってる朱里がたまらないから。ヤバイ、萌える」



もえる…って燃える?何が?うーん…

意味がわからなくて考え込んでいると、たっくんがこれでもかと言うほどジーッと見つめてきて。恥ずかしくて目を逸らせば、ふわっと包み込むように抱きしめられた。



「ああ、ほんと可愛い。着せてよかった…」

「フフッ、変なたっくん」



たっくんの腕の中で聞こえた声がすごく嬉しそうだったから思わず笑ってしまった。

何が燃えるのかは結局分からないけど、ただたっくんのシャツ着てるだけなのに…本当に変なたっくん。