「朱里?」

「…うっ、」

「なに、どうしたの?」



…言えない。

ふわっと香ってくる大好きなたっくんの甘い匂いが今はすごく嫌だなんて、そんなこと…

口が裂けても言えない。




「あ、あの…もう出来上がったからテーブルに運んでもらってもいい?」

「…?うん」




不思議そうな顔をしながらも私の頼みを快く受け入れてくれたたっくんは、すぐに私から離れて出来上がった料理を運び始めた。

うう…これは…なかなか辛い。


大好きなものが一瞬の内に不快感に変わる悪阻はすごく恐ろしいということを知った。


とりあえず、たっくんに話すまでは頑張って耐えないと。

食欲ないけど、ご飯もちゃんと食べなきゃ怪しまれるよね。あっくんの前で問い詰められたら困るよ…どうしよう。

ああ、そうだ。あれなら…食べれるかもしれない。