「…………俺にもはじめは、わかんなかったよ。いつから好きになったのか覚えてないけど……、不器用でどんくさいのに、人一番頑張って空回りしているあんたを見てるとほっとけなくて…。
そんなバカで危なっかしいあんただけど、そういうところが可愛くて好きだよ」

っ……、こんなこと聞くんじゃなかった。

「顔真っ赤、可愛い」

「……かっ、からかわないでっ」

顔が熱い、ダメだ煉にのせられてる気がする。

「でも、わかってる。どんなに好きでも愛していても叶わないこと。
俺は養子だし、あんたは弟としてみてるし……、恋愛相談されるし。テキトウなこといったのに上手くいってるし、いつのまにか付き合ってて…………焦ってもどうにもならなくて、結局置いてきぼりされて……。

ほんと寂しかった、またあんたから俺じゃない他の男の香りがするのかと思うとイライラしてた。

いつも隣にいてくれたあんたが誰かに取られるのが許せなかった。

あんたと付き合ってる彼氏を無理矢理にでも引き剥がそうって何度も考えてた。

でも別れた後のあんたはいつも泣いてて、本当に好きだったって…………その寂しそうな背中を見てそう思ったよ。

ほんとはこんな告白だって…………総て言うつもりなかった。我慢しようって思ってたんだけどなぁ」

「……………」

私は何か煉に言おうとして、口を開くけど言葉がでなくて閉じる

何を言えばいいのかわからない…。

「早く決めてよ。言っとくけど、同情なんて要らないから、ちゃんと選んで。
例え…………彼氏を選んでもあんたはわるく…………っ、やっぱなんでもない。今すぐ忘れて…………」

と、ごまかされた。

煉は意地悪で優しすぎる…………。

最後の言葉、彼氏を選んでもあんたは悪くない、気にするな、って言おうとしたんでしょ?

わかるよ、そんなことぐらい。何年一緒にいたと思ってるの?

煉は曲がったことをいっても根は真面目で素直なんだから。

どんなに煉が暴言をはいても、私を恨んでいても、その裏には優しさがあって……、彼から溢れる気持ちに私の心が揺れ動く。


煉のことを考える度に心がえぐられるように痛くて苦しいのは同情だよね…

だなんて苦しい嘘つくのもみっともないよね。

ゆっくりと瞼(め)を伏せた。

「………」

「お願い、これ以上期待させないで。早くフレよ!なぁ…………」

え?

ああ…、そうか…………諦めてるんだ、煉は。

昔から煉はいろんなことに諦めてるから……冷めた空っぽな目をするようになったんだ。

全然気づかなかった。昔は無垢な目をしてたのにね。

ずっと隣で見てきたはずなのに一番わかっているはずなのに、姉として…………ううん、違う。

今は『姉として』って言葉は違うことはわかる。

けど…………“その言葉”を言えばもう、後に戻れない気がしたから。

すると、煉が口を開く。

「あんた…………長いよ!それだけ考えてくれるのは嬉しいけど、どうせあんたの中ではあいつしかないんだろ?ならー」

すごく腹立たしくて、悔しくて煉の胸板を両手で叩いた。

「……煉は自分勝手だよ!赦すとか、赦さないとか、愛してるとか……私を掻き乱しておいて……早くフッてって……あんまりだよ!バカなんじゃないの!」

「え、ば、バカ?ってーいたっ、痛い………ご、ごめん」

煉は離れると驚きながら謝る。


なにもわかってないのは煉の方だ。

私がこんなに苦しくて辛くて悩んでるのに…………


わかってる、これが答えだってことも言葉にできないだけで…………。


何故かすごく腹立たしく悔しいと感じる。

あ、そうなんだ。この気持ちはこれが煉の罠だから

例えこれが彼の意図じゃなかったとしても、掛かってしまった。

こんなの巧妙すぎるよ………。

煉が怒るのも哀しい顔をするのも笑顔で嬉しそうな顔をするのも、愛おしそうな顔をすることだって、全てが私に向けられたものだから。

彼の愛は重くて甘くて…………溺れてしまいそう。

甘い果実を食べられずにはいられないぐらい病み付きになる。

それが、彼の罠

もう煉のこと以外考えられないようになってしまう甘い罠に掛かったんだから。

「全部煉のせいだよっ……」

唇を噛み締めて煉の目をまっすぐ見つめる。

今までなんとも思っていなかった煉の顔も今は緊張して鼓動が早くて怖い…………けど

「………いいよ、煉になら壊されたって!私のこと赦さなくてもいい、弟に戻らなくていい、だから寂しいこと言わないでよ。煉のこと好きって……気づいたんだから」

涙と一緒に零れた言葉。

「え……ほんとに……いいの?」

「バカ!冗談で言ったりしない」

煉のシャツをギュッと握りしめた。

「あははっ、あーもうあんたが可愛いすぎてどうにかなりそう。……優しくなんてできない、我慢しない。弟にも戻らない、離してやらない、絶対に……大切にする」

弟のように甘えた声でそういった。

「……うん」

「……っ死ぬまで愛してるし、離さないから覚悟してね?」

耳元で囁かれるからくすぐったい。

「うんっ……」

ギューッと抱き締められた、彼背中に腕を巻き付ける、

「……あぁ、選ばれるなんて思ってなかったから……嬉しい」

いつもクールで大人ぶっている煉とはちがって無邪気に笑うからキュン、としてしまった。

弟でない、一人の男でありこれが煉なんだ……

なんだか恥ずかしくなってまた顔が熱くなる。

「また照れてる、可愛い」

頬に手を触れられると、煉の顔が近づいてキスを落とした。

何もかも考えられないほど甘くて優しい口づけ

煉と私の指が絡みあう。

唇が求めあって、夢中になってた。

煉は余裕がないくらい必死だけど、手つきは優しい。



どうしてだろうどんなことされても嫌じゃないのは。


逆に心地よく感じる、煉になら何をされてもいいって思ってしまうのは……








そっか……


だって私は


ずっと前から君の色に染まっていたから。







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