着る、絶対着る。着ないわけない。好きな人に買ってもらった物だもん。
「分かってるよ。ちゃんと着る。」
幸せ過ぎて怖いくらい。もう本気で私はりくのことを好きになっていた。
「良し。」
私の頭を撫でるとレジに向かうりく。その後ろ姿を見ながら胸がきゅうっと締め付けられて苦しくて悲しくてでも幸せで涙が出そうになった。
私が付いてこないのが不思議に思ったのか、「何してんの?」と振り向いたりくと目があってしまった。泣きそうになっている顔を見られては困る。そう思いすぐに目を逸らして「今行く〜。」となるべく平常心を保って答えた。
お会計を済ませ服屋さんを出ると17時を過ぎていた。
「こっからどうする?」
「どうしようね」
「ちょっと早いけど飯でも食いに行く?」
「うん、いっぱい歩いたしお腹空いた。」
「じゃ、行くか。」
「ん。」
2人で駐車場に向かう。車を見つけて乗り込むと、「何が食いたい?」とスマホを見ながら言うりくに、「オムライス。」と言うと、「ん。わかった。」とくしゃっと笑った。その笑顔にまた鼓動が早くなり顔が少し熱くなる。
車が発進すると、車内は流行りの曲が流れていて、テレビのCMやお店で聞いたことがあったから口ずさんでいた。
「この曲知ってんの?」
「うん、聞いたことある。誰が歌ってるのか知らないけど。」
「そっか。これ、俺が好きなバンドの曲。」
そうなんだ、りくはこのバンドが好きなんだ。りくのことを知れて嬉しくなった。
「この曲いいね。このバンドの他の曲も聞いてみたい。」
りくが好きなら私も好き。これからこのバンドの事もりくの事も沢山知っていきたい。
「CD貸してやろうか?」
「いいの?」
「ん。ほら。」
そう言ってCDを1枚渡してくれる。
「ありがとう。」
「ん。あ、もうすぐ着く。」
「やっと着いた〜もうお腹ペコペコ。」
「子供だな。」
そう言って少し笑うりくの横顔を見つめながらCDをそっと抱きしめる。
車から降りてお店に入る。お店の中は美味しそうな良い匂いが充満していて食欲がそそられる。店員さんに案内された席に座り、オムライスを注文する。
「腹減った。」
「ペコペコ?」
「うん。」
「りくも子供だね。」
「うるせえ。」
そんな他愛もない話をしているとオムライスが運ばれてきた。トロトロなのにフワフワな卵の下には美味しそうなケチャップライス。一口食べればほっぺが落ちそうになる程美味しかった。
「ん〜美味しい!」
幸せに浸りながら次から次へとオムライスを口に運ぶ。
「もっとゆっくり食べればいいのに。」
オムライスにがっつく私を見ながら笑うりく。
「うるさいな。お腹空いてんだもん。」
口の中いっぱいにオムライスを入れ、幸せに入り浸る。そんな私を見てまたりくが笑う。
食べ終わって会計を済ませて店を出る。
まだ19時。
「次どうする?」
りくが車に乗り込みながら私に聞く。
「ん〜、明日学校だしもう帰ろうかな。」
本当はもっと一緒にいたいし、なんならずっと一緒にいたい。でもそれは無理な話で、これ以上一緒にいたら離れたくなくなりそうで怖かったからもう帰ることにした。
「わかった。またあのコンビニでいい?」
「うん。お願いします。」
「はいよ。」
りくの返事を最後に車が発進する。
まだ一緒にいたくてたまらない気持ちを精一杯に抑えて窓の外を眺める。こんな時に限って信号は青ばかりで全然止まらない。なんだか眠くなってきてウトウトし始めた時、赤信号で車が止まった。
「寝るならこれかけろ。」
そう言って後部座席からブランケットを取って私にかけてくれた。
「ありがと。」
嬉しいのと眠いのと恥ずかしいのでブランケットを頭まで被る。眠れるわけがない。眠気なんて飛んでしまった。今ブランケットから顔を出せば、真っ赤になっているのがバレてしまう。