でも、あの時はああするしかなかった。
他に、方法なんて……。
「別れたことは最善だった?」
彼の瞳が揺れていた。見たこともないくらい儚げに、切なげに。
……やっぱり、そこなんだ。
そもそも、あたしと怜央くんの別れは、なんの解決にもなっていなかったんだ。
藤谷さんの悪行を知ったうえで、それをなかったことにしたのはあたしだ。
あたしはただ……逃げていただけなのかもしれない。
藤谷さんがこわくて、向き合うことを恐れて、ただ逃げて。
ひとりで解決した気になって。
結果……怜央くんを殺してしまった。
「……っ……」
漏れる嗚咽が堪えられず、口元に手を当てる。
あたしは、なんてバカだったんだろう。
「相馬怜央は、本当に君が好きだったんだよ」