すると、自分に興味を持ったことがよほど嬉しかったのか、彼はパッと目を輝かせた。
「怜央くん、って呼んでくれてたよ」
口元に柔らかく弧を描いて。
「……怜央……くん……」
自分の言葉に乗せてみたけれど、懐かしいと感じる気持ちは少しも現れなくて。
それが悔しくて、やっぱり涙がこみあげてしまった。
「ありがとう、名前、呼んでくれて」
ポン、と優しく頭に乗せられた手。
見上げれば、いつもの微笑みとは違う、自然な笑顔を見たような気がして。
あたしも不思議と自然に笑うことができた。
彼のことを思い出したい。
……もしも思い出せなかったとしても……あたしはもう一度この人と恋がしたい。
今日、初めてそう思った。