知りたい……けど。


分からない……分からないよ……。


もう、どうしたらいいのっ……。


今にも泣き出しそうなあたしの手に、彼の手がそっと重ねられた。



「……っ」



その瞬間、涙がグラスの淵に落ちてはじけ飛ぶ。



「もう一回、最初から俺を知ってくれればいいよ。そして、もう一度俺を好きになってくれたらいい……出会ったときみたいに」



涙の意味を、語らずもくみ取ってくれた彼は、優しく手に力を入れた。


その手が温かくて、もっと涙が出てしまう。


ゆっくり顔をあげると、ジッと見つめる彼の目にも、うっすら涙が浮かんでいた。


ハッとした。


きっと……彼の方があたしの何倍も苦しいんだ……。



「でも……」



あたしがもう一度彼を好きになる保証はないし、自分のことだけ忘れてしまった彼女のことなんて、嫌じゃないの……?


だったらあたしのことなんて忘れて、自由になったらいいのに……。