彼がこうやって、以前のあたしをにおわせるたびに、やるせない気持ちになる。


今日も上手く笑えなくて、ぎこちない笑い方になってしまった。



【レモンスカッシュ強炭酸】と書かれたジュースを見つめながら肩を落とす。


思い出せないのは、自分のせいなのかな。


どうして、彼のことだけ忘れてしまったのだろう。



「早く退院できるといいね」



ジュースの蓋を開け、中身をグラスに注ぐ彼はあたしの回復を第一に願ってくれている。


早く俺を思い出して、とは一度も言わずに。


あたしにプレッシャーを与えないようにしてくれているんだろうけど……。



「はい、のど乾いたでしょ?」



手渡されるグラス。


今日は特に暑いし、ベッドの上にいるだけでも体が水分を欲している。


足を骨折してなかなか自由に動けないあたしには、嬉しい差し入れだった。



「……ありがとうございます」