美羽を、クラスに送ったあと、しばらく沈黙が流れていた。

「お前、そんな顔すんなよ。別に殴られた訳じゃないんだからさ。」

そう言った桜庭に僕は強い口調で言ってしまった。

「美羽が殴られそうになったことが、問題なんだ!!
僕がしっかりしてないから!そんなことあってはならないのに!!」

そう言った時、僕の感情が溢れだし、涙が溢れて止まらなかった。初対面の人にこんな姿見せるなんて・・・!
今日の僕はどうかしている。

ギュッ!

「なっ・・・!!///」

急に抱きしめられた。その力は強くて、振りほどくことが出来なかった。

「お前さ、何があったか知らねーけどさ、何でもかんでも、溜めすぎじゃね?
少し息抜きしろよ。今ぐらい・・・あのチビいねーし、しばらくこのままでいろ。」

そんなこと、言われても・・・!///

でも、桜庭の言うことは当たっていた。僕は、ずっと強がっていて、誰かの為とか思っていた。心配かけたくない、その一心だった。でも、その態度が周囲に心配を掛けているとは知らずに。

こんな簡単に見抜かれてしまい、悔しかった。今まで隠してきたものが、全部出てしまった。でも、桜庭のことは嫌じゃない。
そう思うと急に恥ずかしくなり、心臓の音が速くなった。
どうしてだろう。桜庭の体温が、ぬくもりが僕の身体に伝わって凄く落ち着く。
人の体温ってこんなに暖かくて、気持ち良いんだ。

「優羽?落ち着いたか?」

桜庭が、急に下の名前でよんだ。でも、嫌じゃない。
いつもは嫌なのに。どうしてだろう。凄く調子が狂
う。平気でいられない。

「・・・・・・やだ・・・・・。下の名前で呼ぶな・・・・。」

素直になれない。まだ素直になるのは、難しい。
そして恥ずかしい。

「顔真っ赤!熱あるんじゃね?」

そう言って僕のおでこに手を当てる。

「熱なんか、無い!!無いから!!!」

変な答え方をしてしまった・・・・。これでは怪しまれる。
チラッと桜庭を見ると、やはりニヤニヤしていた。
コイツ性格悪いな。

「じゃあ、俺に恋してるんだ。嬉しいな~。こんな可愛い子を俺の彼女に出来るなんて。」

「はぁ?そんなんじゃない!か・・・彼女とか、そんなのありえない!」

僕はキッパリ断ったつもりだ。でも、恋してると言わられたら否定は出来ない。多分これは、恋なのだろう。


僕と彼の、歪な関係がスタートした。