「ごめんね、言い過ぎた。
……ちょっとおいで?紅葉」
言葉と同時に、私は両腕を紅葉の前に広げた。
少しだけ優しくしたことで、俯きかけたその顔は私の方を向いたが、まだ捩れた感情はその顔に残っている。
それでも黒い影は私の方へと近づいて、ふわりとした綺麗な黒髪は、私の頬に擦れた。
私は腕を紅葉の頭へと伸ばして、指で優しく梳いた。
「あのね、紅葉の言うことはすごくよく分かる。でもね、前向かなきゃ人間変われやしないの。やって後悔よりやらなかった方が何倍も後悔すんの。例え当たってヒビ入っても何かが、誰かが、絶対固めてくれる。その方が強くなるの。」
これは押し付けだ。紅葉への勝手な私の押し付け。
人生に失敗した自分を慰めるために、子供を躾ける親のように。
紅葉が何度も、分かったと言うようにコクコクと頷く。
その度、サラサラした髪が私の肌に当たった。
ーースス……
もう一度髪を梳いた。