「そ、それより蒼井、もうお店の方に行っちゃったのかと思ってた」


この甘ったるい雰囲気と恥ずかしさに耐えられなくて、話題を振る私。

もういい加減、この空気はつらい……


てか、私がいたたまれない。


「いや、ちょっと女子に捕まってて……
あ、もしかして?俺がいなくて寂しかったとか?」


さっきの余裕なさげな姿はどこに行ったのか、私の頭をポンポンとして、楽しそうに聞いてくる。


何その、自信満々な顔は……


「違います。
ただ聞いただけだから」



ほんっと、調子いいんだから。


なんでそう、都合のいい解釈ができるのよ……

久しぶりに蒼井の言葉にイラッときて、ぐぐっと自分の眉間にシワが寄るのが分かる。


「まあ、そういうことにしといてあげる」


ニヤッと笑って、聞く耳を全く持たない蒼井。


その目は、そうだろと言わんばかり。


うわぁ、ムカつく顔……


「勝手にすれば?」


頭に乗った手をべしっと払い、顔を逸らして冷たく突き放しても、


「あ、これは莉世の照れた時の言葉だ」


なんて閃いたように言ってくるから、次はべしっと腕を叩いてやった。