「なんでも聞く、なんて言葉を俺に言うとか、莉世はまだまだ男ってものを分かってないな〜」


「は?一体どういう……」


言っている意味が分からず、首を傾げてハッとする。


今気づいたけど、これ……たくさんの人に見られてるんだった!!


いくら蒼井を励ますためとはいえ、何やってるんだろう、私!?


大声で蒼井の名前呼んだり、抱きつこうとしたり……


と、とりあえず、歩優の所に戻ろう……


照れくさすぎて、蒼井の顔も見れないし……


「じゃ、じゃあ、試合頑張りなさいよ」


そう言って、そそくさと退散しようとしたけど、


「っ!?」


グイッと腕を引かれて、トンっと背中に当たるのは、蒼井のぬくもり。

まさに、形勢逆転された気分。


「そんな俺を喜ばせるような言葉を聞いた俺が、どんな風になるか、分かってる?」


「は?」


耳元で聞こえる低い声は、もうさっきの緊張で震えていたような声じゃない。

胸の内がくすぐったくなるような、何かに誘われるような甘ったるい声。


「たぶん…てか、絶対離してあげられねーし、マジで莉世のこと、襲っちゃうかもよ?」


「は、はあ!?」


慌ててバッと掴まれた腕を振り払い、距離を取るけど、いつも通りニヤリと笑う。


「じゃあ言われた通り、勝ってくるから。
さっきの言葉、忘れんなよ?
俺、楽しみにしてるから」


いつもの調子を取り戻した蒼井は、満足そうに笑って、チームの所へ戻っていく。


な、ななっ……!?


はあ!!?


今、なんて言われた……!?


「り、莉世!!?
顔、真っ赤だよ!?」


慌てて駆け寄ってきた歩優に肩を揺さぶられるけど、もう遅い。


私……完全に、かける言葉のチョイス、間違ったかもしれない。