「前に蒼井が、私を励ましてくれた時のような言葉なんて出てこないけど……」


私なりの言葉で、応援する。

エールを送る。


「蒼井は今、1番頑張ってる。誰よりも頑張ってる。それは、同じチームの人が1番分かってくれてることだから。だから、安心して行っておいで」


「っ……」


そう言って、両手で大きな背中をトンっと押す。


「そ、それと……」


「それと?」


これは私からの、蒼井への精いっぱいのエール。


言おうかどうしようか迷ったけど、これなら蒼井も頑張れるかなって思って。


決意を固めて、俯いた顔を上げ、太陽に反射してキラキラと輝く蒼井の髪を見る。


「し、試合に勝ったら、蒼井の言うこと、なんでも1つだけ聞いてあげる。
……だ、だから、頑張ってよ」


それからやけくそで、力いっぱい押してやった。


「はー………」


「……なに?」


「……俺、かっこわりぃ」


そして蒼井は髪をグシャグシャとする。


「ほんっと、莉世には敵わないなぁ」


「え?」


「弱い所を見せても、イメージと違うとか言わないし、何よりも温かい言葉をくれるなーって」


「べ、別に当たり前のことをしただけ……誰だって、弱ってる時は傍にいてくれる人の存在が心強いし、救われるんだから」


中学の時の、私みたいに……

今のはきっと、自分に対しての言葉なんだろうな……


つい口を出て言ってしまったけれど、本当はいつも思っていたこと。


「俺が好きになった子は、俺にはもったいないくらいカッコよくて男前で、最高な子だよ」


「え……?」


そう言うと、すぐ後ろにいた私に、顔だけ動かしてニッと笑いかける。


ドキッ──────


“ 蒼井の、喜ぶ…顔 ”


胸が高鳴る中、歩優の言葉を思い出す。


そう、これが…私が好きな表情。


目を細めて、口角が上がってて、こっちがびっくりするくらい、太陽みたいに明るく笑う。


不思議と元気が出てくるような、見てるこっちが安心するような、優しい表情……