「えっ!?
り、莉世?」


離れたはずなのに、なぜか真後ろにいる私に
驚き、振り返ろうとする蒼井を制して続ける。


「いいから。
こっち向かないで、そのまま、黙って聞いて」


「あっ、は、はい」


抱きつくなんて高度なこと、さすがに恥ずかしくて無理だから、ぎゅっとシャツの裾を引っ張って、背中に額をつける。


やっぱり……

ドッドッドッと、とてつもなく、心臓が速く動いているのが分かる。


「蒼井なら、きっとできる。
大丈夫」


「っ……」


そう言うと、蒼井はビクッとする。


思った通り、緊張してたか……


最初私の所へ来た時はなんとも思わなかったけど、抱きしめられた時の声とか、手とかが若干震えてるような気がしたから。


そりゃあ、こんなに人がいる前でしかも相手は上級生。


サッカー部でもない人がPK戦に出るなんて、さすがの蒼井でも緊張したっておかしくない。

必死にそれを隠してたようだけど、私にはバレバレだったよ?