ぎゅっと抱きしめられた腕の中、くぐもって聞こえてくるのは悲鳴ばかり。
「ぎゃーーーー!!!」
「蒼井くんーーー!!!」
「誰かのものにならないでえぇぇぇーー!!」
一気に騒がしくなるギャラリー。
「ちょっ、ちょっとあおっ……」
こんなの、公開処刑だよ……
みるみるうちに、自分の眉間にシワが寄っていくのが分かる。
「俺を、応援しに来てくれたんだ?」
数えきれないほどの人が見ているというのに、そんなことには目も暮れず、声を弾ませて耳元で囁く蒼井。
それはもう、嬉しそうに。
「あ、歩優に誘われて、仕方なく来てあげただけっ……!」
けど、抱きしめられている恥ずかしさを紛らわせるために、素直じゃない私はそう言うしかなくて。
「莉世なら絶対、そう言うと思った」
そう言って、ポニテールにした私の髪を梳きながら、クスクス笑う。
「髪上げてるの、初めて見た。
めちゃめちゃ可愛い」
「き、今日は動くから、上げてた方が楽だと思って」
髪を梳く手や、クスクスと笑う蒼井の息が、首とか耳に当たって、なんだかくすぐったい。
必死に身をよじって、脱出を試みるも、それは無駄な抵抗。
「次、PK戦なんだ」
「うん」
今の試合、同点だったからか……
「これに勝てば優勝だから、絶対に勝ちたくて。莉世から力もらいたいから、もう少し……このままでいさせて」
周りからの視線、抱きしめられたぬくもり。
とんでもない状況に、顔が、体が、全身が燃えそうなくらい、熱いけれど、蒼井の真剣な声に、頷くしかなくて。