「とにかく、私は応援には行かな……」


頑なに拒否して、歩優とは反対の方向へ向かおうとするけれど、


「いいの?
私、見ちゃったんだけどなぁ……
屋上で、蒼井くんと莉世が、熱い抱擁をした後、何してたのか」


「なっ!!?」


その言葉に耳がピクっと動き、バッと後ろを向けば、不敵に笑う歩優がいた。


あ、あれは……

てか、どうして歩優がそんなこと知ってるのよ!?


「朝教室に行く前に、自販機に寄っていこうと思って、屋上近くを通りかかったら声がしたから。誰かいるのかなーと思って、覗いたら見えちゃったってわけ☆」


ごめんよ。てへぺろ☆と言わんばかりの歩優と、膝からガクッと崩れ落ちる私。


あれを、見られていたなんて!!

しかも友達に!!


一生の不覚……


恥ずかしすぎる!!

みるみるうちに赤くなる顔を手で覆うけれど、カシャッとした音が聞こえて、頬を嫌なものが伝う。


「歩優……それは、なに?」

「んー?蒼井くんとのことを、思い出して、顔を真っ赤にさせてる可愛い莉世の写真!!
これ、蒼井くんに見せてもいいんだよ?」


ニヤリとして、ずいっとスマホを見せてくる歩優は、もはや悪魔。


それで脅してくるなんて。


私達、友達でしょ!?


「さあ、どうする、莉世。
大人しく応援に行くか、この写真を蒼井くんに見せちゃうか」


そんなの、応援に行くしかないでしょーー!?

 
「……わ、分かったから、それ消してよ?蒼井にも絶対見せないでよ」


「分かってるって」


「絶対の、絶対よ?」


見られたら、何言われるか分かんない。


どうせ、


「顔真っ赤じゃん。
俺のこと考えてるとか、莉世ってば俺のこと大好きなんだな?」


なんて、からかわれるのがオチだし。


「女に二言はないよ!じゃ、交渉成立ってことで!!」


と、満足気な顔をした歩優は落ち込む私をズルズルと引っ張っていく。


歩優、それを言うなら男に二言はない、の間違い……


はぁ……と大きくため息をつく私とは裏腹に、目をキラキラさせて早くと急ぐ歩優。


結局、こうなっちゃうわけね……


そしてもう一度、ため息をついたのだった。