「もう戻んないと、授業始まるし、行こうか?」


そう言って、にっこり笑って手を差し出してくる。

目は細められて、とても嬉しそうで。


その微笑みに、またドキッとする。


「っ……」


さっきから、私ばっかり翻弄されて、振り回されて、心もぐちゃぐちゃで。


何も、考えられないけど、


「べ、別に、蒼井の助けなんていらないから……」


なんとか足に力を入れて歩き出せば、蒼井はくくくっと笑うだけ。


「ほんっと、絵に書いたようにツンデレだなぁ、莉世は。本当は、嬉しいくせに?」


「……なにバカなこと言ってるの?
嬉しいとか、絶対に思わないし」


ふんっと視線を外しても、冷たい言葉で突き放しても、もっともっと楽しそうに笑われて。


「そう言ってる割に、首まで真っ赤だけど?」


なんて、クスッと笑ってツンっと頬をさわってくる。


「ちょっと!?
さわらないでよ!」


「しょーがないじゃん。
可愛い莉世が悪い」


向けられる甘い視線に、また体がカッと熱くなる。


都合のいいことばかり言って……


でも……

もし、その手を取っていたとしたら、


この…胸のドキドキは。

頬の、顔の、全身の火照りは。

この、触れられた時の、恥ずかしいけれど、なんとも言えないくすぐったさの正体は。


なんなのか、分かったのかな……


そんな気持ちを抱えて、隣を歩く蒼井を見上げたのだった。