無自覚やら、小悪魔やら、聞き慣れない単語をブツブツ言ってるのはまあ……聞かなかったことにしよう。


けど、見ないでって言われたら、見たくなるのが人の本質ってものだよね。


未だに意味不明なことを言ってる蒼井のことだから、別に……いい、よね?


こっちは、いっつも蒼井にしてやられてばっかりだもん。

たまには私だってやり返したいし。


「蒼井、こっち見てよ」


「むり」


「なら、私が蒼井の顔を見たいって言ったら?」


「…………」


自分の中で必死に絞り出した言葉でも、めちゃくちゃ恥ずかしくって。


だけど、頑張った……


うん。頑張ったよね、私。


「ね、蒼………」


私は油断していた。


珍しく弱ってる蒼井のことだから、今なら仕返しができると。


でも私はすっかり忘れていた。


蒼井に告白された次の日の昼休みに、言われたことを。


「ね、蒼……きゃあっ!?」


気づいた時には視界いっぱいに映るのは蒼井のニヤリと笑う顔だけで。


え、えっ……!?


状況が掴めず目を白黒させていると、


「……前に、言わなかったっけ?
俺とふたりっきりになったら危ねーよって」


「あ………」


ふっと笑った蒼井の表情には危険な雰囲気が垣間見えた。


ああ……私、やっぱりバカだ。


そんな大事なことを忘れていたなんて。