さっきの蒼井は別人みたいに、何かに焦ってるような、急かされてるような、そんな感じがしたから。
いつもの、優しい蒼井に?戻って欲しかっただけだから。
「莉世ってさ、どんだけ好きにさせたら気がすむわけ……?」
「え?
なんて?」
「いや、なんでもない。
今、絶対こっち見ないで」
そう言って、私の肩に頭をグリグリと押し付けてくる。
頬に蒼井のふわふわとした髪が当たってくすぐったい。
もう、一体なんなのよ……
けど、なんだろうな……この気持ちは。
嫌なはずなのに、嫌じゃない。
離してほしいはずなのに、無理にでも離して欲しいとは思わない。
今までだったら絶対嫌で、振りほどいてでも教室に戻ってたはずなのに。
いくらでも抵抗して、この場からいなくなることだってできるのに。
でも不思議と、そうしようだとか、蒼井との2人でいるこの状態が嫌だと思う自分はいなくて。
別に今だけは、このままでいてあげてもいいかなって思う自分もいて。
……まあ、めっちゃ上から目線だけどね。