きっと仁菜ちゃんからすれば残酷な事をしているのかもしれない。
彼女の望みは淵くんだけにあったのだ。彼から発せられる言葉だけが信じるものなのだ。
「っ、っ――!!……なに、瀬戸さん。悪いけど邪魔しないで」
必死にその言葉を噛み砕いて押し戻して、制止に入った私を咎める。
そう、二人の間に入ることは邪魔以外の何者でもない。
それでも互いが互いに傷つくのなら、どうしても止めなければならない。
「嫌だ。淵くんが仁菜ちゃんにそう言うこと言うなら邪魔だってする。何度だって大声で名前を呼ぶから」
「なんで……。何で瀬戸さんが庇う必要があるんだよ。酷いことも言われて、手を上げられそうになってまで!」
「違う!私は仁菜ちゃんを庇ってなんかない。仁菜ちゃんからすれば私が淵くんを庇ってるんだよ」
「……は?何でそうなるの?明らかにおかしいって」
「……」
彼が言うのは最もだろう。しかし、それに答えようとすればまた仁菜ちゃんは怒って話が振り出しに戻る。
仁菜ちゃんの手の上で踊らされてる訳にもいかないのだ。望む通りに誘導されてはいけないのだ。
あくまでも彼が終わらせなければ、私では幕引きには役不足なのだ。
一つ、息をついて彼の言葉を思い返す。思い返すのは胸が痛いけれど我慢する。
「……淵くん仁菜ちゃんの話する時はいつも絶対そんな事言わないよね。むしろ自分が悪かったって、そう言うよね。私、それはいつも淵くんの本心だと思ってる」
「……そんなのはただの綺麗事だよ。瀬戸さんによく思われたいだけの狡い浅知恵だったんだよ」
「嘘。それなら淵くんが変われたのは何だったの?仁菜ちゃんの事を想って変わろうとしてたからでしょう?」
「違うよ。瀬戸さんがいたからだよ。瀬戸さんが俺を肯定してくれたから」
「違う。私の為に仁菜ちゃんを否定しないで。受け入れて。私を信じないで。だって……」
私を信じても救うことなんて出来はしない。ここまで来れたのは他でもない彼自身の力だ。
一緒になって手を取り合うことならいくらでも出来る。いくらでもする。
それでも、どうしたって
「――……だって、私は神様には成れない」