仁菜ちゃんは落胆するように肩を落とし、細い声をあげた。


「……ねぇ、どうして千花ちゃんには私の事が分かって、ナナくんには分からないの?」

「分かんないよ。俺は察しが悪いから出来るだけ口に出してっていつも……っ、」


言いかけて口を閉ざす。

節々に見えたのは二人の時間。その時のようなやり取りをしていると彼自身も気づいたのだろう。グッと唇を噛んで、また突き放す。


「どっちにしろ、もう水無川の言うことは受け入れられないんだから諦めて」

「あ、そ。だったら私はまたこうやって千花ちゃんを傷つけてやるから」


それでも引き下がらないと言う意志。

一種の意地のようにも思えて段々と痛々しさすら感じる。


「!!だから何でそうやっていつも誰かを傷つけようとするんだよ!」

「誰かって何?誰のこと?」


そうやって分かり易く誘導するのに、やはり彼は頭に血が上っているのか気付かない。


「月乃のSNS荒らしたのは水無川だったんだろ?!確証は取れてる!考えたくなかったけど、あんな変な噂流したのだって……!」

「……だって嫌いだったんだもん月ちゃん」


仁菜ちゃんは目を逸らして、薄ら笑いを浮かべる。それは肯定とも取れるけど、肯定には成り得ないこと。しかし、彼は返答を聞いてグッと手に拳を作った。

怒りを堪えて、でも溢れるものは堰きとめられない。


「っ!!なら、俺だってニーナのそういうところがきら、」

「淵くん!!」


だから私が無理矢理でも押し戻してやるのだ。