「無責任に肯定して、無責任に受け入れて、無責任に好きだって言って、無責任に約束して、私はそんな人間なんだよ」


仁菜ちゃんに対しても淵くんに対しても、誰に対してもそうして来てしまっていた。

だから腹が立ったって悪意を向けられたって仕方がない。


「だったら千花ちゃんの価値観を押し付けないで」


それでも、


「それでも、そんな私の無責任な言葉に意味を持たせてくれたのは淵くんだったんだよ」


意味のない事が意味のある事に変えてくれたのだ。

変わろうとした彼自身の行動に私もまた救われていた。


「私だって嫉妬した。仁菜ちゃんが根本にいることに気づいて嫌だった。それでも淵くんが私を救ってくれた」


言葉で、行動で、その心で。


「こんな嫌な気持ちを消化できなくなったらそれこそ別れる勇気だって必要なんだと思う」


消化不良を起こして、起こして、起こし続ければ、吐き出し口は何処になるかなんて明確。

無責任でも、身勝手に相手を傷つける事だけはしたくない。

その結果がもし、仁菜ちゃんだったとしたなら。なんて、考えてそれは余計な詮索だと首を振る。


「それでも、二人で消化できるうちは二人でいたい。綺麗事でも言い合えるうちは、私は一緒になってそれを実現したい」


きっとこれだって彼女にとっては、先のように罵声を浴びせる姿勢になってしまうのだろう。

こんな事しか言えない自分に情けなさを覚えながら、彼女に言う。


「だから、仁菜ちゃんの我儘で淵くんを苦しめないで欲しいな」