白い肌が血の気が引いたように、さらに青白く見えた。黒い目はただ一点、私だけを捉えている。
ピンと張りつめていた神経に触れたのだ。
「――千花ちゃんに何がわかるの……?怒ってくれる友達がいて、追いかけてくれる友達がいて、守ってくれる彼氏がいて。そんな満たされてる千花ちゃんに何がわかるの……?」
思わずたじろいでしまうのは、只ならぬ雰囲気を感じたからだろう。
それでも引いてばかりいられない。
「少なくとも、淵くんは仁菜ちゃんを守ってくれたはずだよ」
「でも最後の最後で月ちゃんを取ったもの!!千花ちゃんだってどうせ聞いてるんでしょ?兄妹でデキてるって噂が流れてすぐに私と別れた!!私と一緒に居れば多少だってそんな謂れもない噂薄れるのに!!その時の私の惨めな気持ちわかる?!」
悔しそうにグッと歯を食い縛る彼女の瞳には少しだけ水の膜が張る。
想像するには簡単で、共感するには難しいその話。しかし、だからこそ共感せずに思いのままに彼女に言う。
「どうして悪い方にしか考えないの?」
「……は?」
乱れた髪も気にせずに、私の言葉を疑うかのような眼差しを向ける。
同調して欲しかったとでもいうのだろうか。しかし、私はもう無責任に言葉を掛けることは出来そうになかった。
「もしかすると、それだって謂れのない噂の中心に立たせない為の優しさだったかもしれないじゃない。自分だけが悪いように振舞って、自分だけが噂の中心になろうとしたんじゃないかもしれないじゃない」
「は、はは……!なに、それ……そんな訳ないじゃん。何処まで平和な頭してるの?」
「そうだね。でも、淵くんから聞いた話、月乃ちゃんから聞いた話。仁菜ちゃんから聞いた話。どうしても噛み合わないのは、誰だってその時の事情があったり、主観が入ってるからでしょう?」
これは只々理屈をごねているだけにすぎないと言うのは理解している。
馬鹿にされたっていい。罵られたっていい。
皆主観で話すのなら
「それなら、私だって主観で意見するよ」
「……!」
彼女はまた、喰ってかかろうとして顔色を変えるも、すぐに脱力したように肩を落として頭もさげてしまった。