気だるいような体を持ち上げて、彼の方に両手を伸ばす。
普段の私なら恥ずかしくて同意なんてすぐにしないだろう。そんな私を知っているからこそ彼は更に戸惑いを見せる。
いつもは許可なんてなく、前置きもなく私の平常心など奪ってしまうのに、躊躇するだなんて変な感じだ。
「ね、寝惚けてる……?」
「そうかもしれない」
半分嘘で半分本当の事を口にする。
正直なところ頭は冴え初めてはいる。しかし、心はまだ寝惚けているのだ。
「だから寝惚けてる内に私を抱きしめて」
煩い心臓が邪魔をしない内に早く。
彼に触れたいと、触れられたいと、言っている内に早く。
「……後で怒らないでよ」
おずおずと伸ばす手は確かめるように、私の手を、指をなぞってから、薄闇に隠れた身体を引き寄せる。
衣擦れの音が聴こえただけで、後は静寂に包まれる。いや、微かな彼の呼吸だけは耳元で聴こえていた。
肌に触れる体温が暖かい。手に籠る力は優しい。
甘えるように身を寄せる彼が愛おしい。