理解が及ばないとフルフルと首を振る。

それでも理解なんてされなくたっていい。


「だって、淵くんが好きになってくれた私だよ?嫌いだなんて言えるわけないでしょう?」

「……」


いよいよ言葉に出来なくなったのか、もう彼女は私に反発するような事を言う事もなく、諦めたかのように肩の力を抜いた。

そうして、力なく笑って見せたのだ。


「……屁理屈みたいなことばかり」

「うん、ごめんね」

「それでもそんな事、私には真似出来ないことですね。――分かりました」


地を踏みしめるように、居住まいを正して私に向き直る。


「私はナナの家族に違いないですけど、その前に妹なんです。兄であるナナはきっと辛い事だって言わない」


淵くんに見せた様に屈託のない笑顔を作って言った。


「だから、千花さん。私の代わりにナナを……お兄ちゃんのこと、よろしくお願いします」


今漸く保留にしていた私への答えを出したように。