月乃ちゃんはパクパクと口を何度か動かして、言葉にならない空気を吐いてからごくりと喉を鳴らす。
「そうやって貴女は自ら傷つきにいくんですか?」
「傷つかないよ。月乃ちゃんが私を傷つけようとしていないのなら」
視線を左下に下げて、歯を食い縛るような仕草を見せる。
「っ、あ、貴女こそ馬鹿ですね……!何がどう貴女を傷つけるか分からないじゃないですか。知らずに傷つけているかもしれないのに」
「それでもいいよ、月乃ちゃんが傷つかないのなら」
「何、それ……本当の馬鹿なんじゃないですか?」
「……そうかもしれないね」
あり得ないと言いたげな表情に私は苦笑いを浮かべるしかできない。
彼女はそれに苛立ったような表情を見せた。
「貴女は自分の好きな人を大事にしたいって言いながら、自分の事を大事にはしないんですね」
「ふふ、まさか。私、自分の事が大好きだよ」
「……は?」
不意を突かれたように素っ頓狂な声が上がった。