「……」


同情しない訳じゃない。可哀想だとも思ってしまう。

けれど、そうやって苦しむくらいなら自分自身が一番辛いと、自分以外が最も悪いと言ってしまえばいいのだ。

だけどそうしない。

『兄妹なのに仲が良すぎて気持ち悪い』だなんてよく言えたものだ。


「――……月乃ちゃんも馬鹿だなぁ」


兄妹だからこそ仲が良くて互いを大切にしているのだ。

兄妹だからこそ二人とも良く似ている。

積み重ねてきた時間が違うのだからそんなの当たり前で、それがきっと、羨ましかったのかもしれない。

だって私だって少しだけ羨ましい。家族と恋人は別物だと分かっていたとしても。

月乃ちゃんは俯いていた顔をゆるりと上げて、大きな目を此方に向ける。驚いているようで、一つ雫が零れたきり涙が次に零れることもなかった。


「ば、ば、馬鹿って……」


まさか自分が言われるとも予想していなかったのだろうか、動揺を見せる。


「月乃ちゃんが淵くんを好きなように、淵くんだって月乃ちゃんの事好きなんだよ。だから、そんな風に言わなくたっていいんだよ」

「よっ、よくそんな恥ずかしい事平然と言えますね……っ?!」

「言うよ。だって、私だって淵くんが好きで、月乃ちゃんの事も好きなんだから」

「はぁ?!」


ニッコリと笑って見せれば彼女は更に驚きを見せて私から一歩離れた。