グッと歯を食い縛り、その涙が零れない様にギュッと目を強く瞑る。
「それでも……それでもね、ナナは仁菜ちゃんの事は絶対に責める事はなかったんだよ。どれだけ仁菜ちゃんが癇癪を起しても自分から別れるなんて言わなかった」
「うん……」
「私がナナから分からずに仁菜ちゃんに疎まれている間は良かったのに、仲が良すぎて兄妹でデキているだなんて変な噂が流れると、仁菜ちゃんと別れるって言って……っ」
まだそれを受け入れていないと言うように彼女は私から遠ざかろうとする。
掴んだ手は握り返される事はなく、指先だけが私の手中で足掻く。
「可笑しいでしょう?そんなの肯定するようなものじゃん。だって、その時の悪者は突然愛想が悪くなった不自然な私だったんだもん。ナナは目に見えず変わっただけだったんだから」
「うん……しんどかったね」
「っ!辛かったのはナナの方なんだよ!だってそんな言われもない気持ち悪い噂の的の中心になったのは、突然彼女と別れたナナだったんだから!」
「……ん」
瞳の中に納まりきれなくなった雫が、溢れ出す。
それを受けて私も喉が塞がれたように声が詰まる。
「それでも……それでも、ナナはヘラヘラ笑って。それが腹立たしくて。っ……馬鹿だなぁ……ほんっと、ばか……」
足掻こうとしていた手には力がなくなり、俯いた顔は髪に隠れて見えなくなった。