「でも違うんですよね。私が目に見えて変わったと言うなら、兄は目に見えず変わってしまった」
「……」
「兄は人の好意はむやみには受け取らないけれど、蔑にする事はなかった。あんな目もしなかった……っ」
淵くんが変わってしまった事が悲しいと言いたげに拳を強く握り込んだ。
「妹と彼女、そうして……――その時の色んな要因が重なって兄を変えてしまった」
責める様に、苛む様に背を丸めてしまう。
「私を切り捨てればもう少しは上手く行っていた筈なのに、私に危害が加わったと知れば、切り捨てたのは彼女の方で……!そんなの気持ち悪いって言われても仕方ないじゃん……!」
耐えきれなくなったように大きく髪が揺れて足元が揺らぐ。
小さな躰に背負うには大きな荷物だったのだ。ならば
「月乃ちゃん……っ!」
崩れない様にその荷物を持ってしまおう。
彼女がしゃがみ込むその寸前、私は彼女の手を取った。
「っ!?」
驚いて振り向き、見開いた瞳にはうっすらと水の膜が張り始めていた。