「どうなんでしょうね。兄はどんなに理不尽な事を言われても我儘を言われても怒ったりしてませんでしたから」
安易に想像出来てしまうのも、彼の性格から来るものだろう。
現に彼は決して彼女の事を責める発言などしていなかったのだ。
「しかしそれは、優越感に浸った彼女を助長するだけで、私なんかにも少しずつ本心を出すようになっていました」
意を決するようにすぅっと深呼吸をして、グッと足元に力を込めるのが分かった。
次に吐き出した言葉は、酷い物だった。
「『兄妹のくせに仲が良すぎて気持ち悪い』なんてあの女は言ったんです」
「っ!?そんなの……!」
「ああ、いえ、別にその事はいいんです。事実でしょうから」
次第に沈む声は言葉とは裏腹に、傷ついている様子で私は掛ける言葉を見つけられずにいた。
月乃ちゃんは私に背を向けてしまう。
「でも、私はどうすればよかったんでしょうね。ごく普通の家族、何処にでもいる妹になれたらよかったんでしょうか」
見つからない答えを探すように、言葉を落とし、一歩私から遠ざかっていく。