そうして、眩しい太陽に負けないくらいの笑顔を向ける。

今まで自発的には向けなかったであろう、屈託のない笑顔。


「それこそ信じられないかと思いますが、貴女と居る兄はここ数年で一番穏やかだったんです。それが私は何よりも嬉しかった」


昨日見せて貰った写真に写る彼女そのものの無邪気さ。

その無邪気さを持ってしても不意に陰を差すのは、彼と同様に根本に根を持つ何か。

その陰に苛まれるように彼女は一つ、問いかける。


「貴女は、兄の何処が好きですか?」


まだ何処か、私を試すように色が沈んだ瞳で此方を見た。

真剣な彼女の問いを一蹴なんて出来る筈はない。例え彼の好きな所を上げるのが恥ずかしくとも。

揺らぐ瞳を抑える様に私はゆっくり瞳を閉じた。

暗い視界に映るのは彼。


「――……優しい所」


そう、いつも私に笑いかけてくれる彼。


「臆病で弱い所」


だけど、それでも一生懸命なのだ。


「なのに向き合ってくれる所」


逃げる事なんて簡単なのに、決して逃げない。


「……そんな所が私は好きだよ」


ゆっくりと目を開ければ彼女は何処かホッとしたような表情を浮かべていた。

次いで微かな笑みを見せ、しかし、泣きそうにも見えるような複雑な表情を作り出す。


「……そうですか」