そんな私の内心など知らない彼女は、今一度問いかける。
「でも、どうして浴衣なんですか?」
「オープンキャンバスの手伝いついでに、茶道サークルの宣伝を兼ねて、なんだけど……」
早い内に宣伝と言うサークルの意向で、イベント事がある度に着物を着るのだ。
今日首から下げているネームプレートにも小さく所属サークルが書かれている。
暑い時期でもきちんと薄い着物を着るのだが、今日に限っては他の部員も浴衣を着ていた。
と言っても、手伝いに来ているのはごくごく少数だが。
「浴衣じゃ一緒に居づらい、かな?」
「いえ、特にそう言った事は気にしません。でも、サークルですか……今日はサークル見学とかはやってないんですか?」
特に浴衣だろうと着物だろうと気にする様子もなく、また無表情に言ってキョロリと辺りを見渡す。
周りには見学者だったり、在学生だったりが居るのみだ。
「運動系は練習してるから見れるけど、文科系は全体的に今日はどこも活動してないと思うよ。夏休み期間のオープンキャンバスならそう言った事もするんだけど」
「そうですか、残念です。なら、とりあえず学食に行ってもいいですか?」
独特の会話テンポで、次の方向を示す。
「あ、お腹空いた?食べて来てないの?」
現在時刻2時前。お昼時は過ぎようとしている。何となく食べてきているものだと決めていたのだが。
「それもありますが、瀬戸さんが疲れてるかと思いまして」
彼女が出してきたのはそんな返答だった。