二人して同じような顔をして私の方に視線を向ける。

呆気にとられたのか彼はリュックを掴むのを止めた。


「いやいや、何言ってんの?」

「そうです。何言ってるんですか?」


そうして二人して同じ言葉を私に投げてくる。元々は仲のいい兄妹なのではないかと思う位。

それがおかしくてつい小さく笑ってしまう。が、説明をしなくてはならないだろう。

先ず一つに、と一本指を立てる。


「だってほら、淵くんは月乃ちゃんをどんな理由であれ、今日実家に帰すのが心配なんでしょ?」


そして二つに、と二本目に指を立ててみせる。


「月乃ちゃんは家に帰りたい。けど、お兄ちゃんが返してくれない」


なら、と指を手の内に飲み込ませて言ってやる。


「どっちも譲りそうにないから、妥協できるのはこの辺りじゃない?って言っても、月乃ちゃんにとっては少し不満が残るだろうけど。同性だって言っても素性の知れない私と一緒ってのも怖いだろうし」

「っ、違っ!私別に瀬戸さんがどうとかじゃなくて!!そうじゃなくて……っ~~!」


敏く、私の言いたい事を察してしまったのか拒否の意を述べる。

しかし、言葉を続けることを躊躇うように口を噤んでしまった。