私の存在など忘れられたかのように、始まる言い合い。
互いに頭に血が上り始めているのだろうが、いい意味で第三者の私は狼狽える気持ちがあるものの、冷静に物事を考える事も出来ていた。
彼は月乃ちゃんが来た理由が引っかかり続けている。対する月乃ちゃんは目的が見えない。
「何だそれ。それとも喧嘩売りにきたの?」
いや、でも月乃ちゃんに関しては私の存在に問題があるように思う。
けれど私は今日が初対面なため、これが単に気まぐれな性格なら見当違いも良い所なのだが。
「喧嘩なんて……っ、したいわけない」
「じゃあ、何でそんな今日は我儘なわけ?」
何にせよ、互いにとって譲れない所があるなら間をとってしまえばいいのだ。
手を一度叩いて声を出す。
「分かった。じゃあ月乃ちゃんは私の家に泊まればいいんだよ」
「……え?」
「はぁ?」
唐突に入った私の提案にポカンと口を開ける月乃ちゃんに、勢いそのままに声を上げた淵くん。
漸く収まった言い合いに、内心ほっと息を吐いた。