泊まるつもりで来たと言うように制服のままで、リュックは見る限り重そうだ。
そして、以前彼は実家まで30分程と言っていたように思う。また電車に乗って同じように帰ると言うのも大変だろう。それに、まだ遅い時間帯ではないにしろ、夜には変わりない。
帰るの一点張りの月乃ちゃんと、私と同じような事を思うのか予定通りすればいいと言う彼。どちらも折れる様子はない。
彼女が何を考えているのかは分からないけれど、思い当たる不安要素を潰してしまえば互いに結論は出せるだろう。
「えっと……月乃ちゃん。私の事は気にしなくてもいいよ?」
「いえ、別に気にはしてません」
「私、もう家に帰るし」
「そうですか。なら駅まで一緒に行きましょう」
「いやいや、何言ってんの月乃」
私の思惑は上手くいかずに、彼女の考えも見えてこない。
私を気にしていないのであれば気遣ってはいない。彼女と言う存在にいい印象がないのであれば、駅まで一緒に行く事も避けるだろう。
彼は困ったように顔をしかめている。
「別に。折角だから瀬戸さんと話してみたいだけ」
そんな彼の様子にふいっとそっぽを向けて、手を離せと言わんばかりに軽く彼の手を叩く。
「いや、でも、忘れ物届けたり泊まりに来たり今まで一度だってなかったじゃん。何かあったんじゃないの?」
「ない。もー!しっつこい!」
痺れを切らしたかのように月乃ちゃんは強い口調で言い返す。
そんな態度に出られてしまえば彼だって、同じような反応になってしまうのも至極当然。
カチンときたように顔をしかめたのた。
「しつこくても、何かあったなら言えってば!帰っても独りなんだから解決しないだろ?!」
彼の言葉に月乃ちゃんは一度息を飲み込み、次いで目に分かるくらい顔を歪めて俯いた。
「それはそっちじゃん……っ」
「はぁ!?」