今日は大学終わりにそのまま彼に会っていて、彼の家と私の通う大学は近く、ご飯を食べた場所からだと彼の家の最寄駅が一番近い。

らしいのだが、二年間過ごしていても同じような高いビルばかりで目印と言う目印がなく距離感があまり持ててない私は、彼の少し後を付いていくばかり。

彼はやはりしっかりとした土地勘があるらしく、大通りから逸れた道にだって入っていく。基本的に大通りしか歩かない私はこれだから未だに道に詳しくないのだろうか。

とは言え、困った時には携帯のナビを使ってしまうのでそれが要因でもあるのかもしれない。

なんて事を考えながら歩いていれば、すぐに駅の明かりが見えてくる。この辺も賑やかな街なので駅も大きくて目立つのだ。

そう言えば、と目線を遠くから左前に変える。


「淵くん」

「ん~~?」


のんびりとした音で返答を示して、心なしか少し足を緩めて私の隣に並ぶ。

何となく足元を見れば、視界に彼のスニーカーが映る。ほぼ同じリズムで足が動いた。


「明日なんだけど……」

「あ、ごめん、ちょっと待って」


と、予定を問いかけて遮るのは彼の声と一際大きい着信音で。

彼は画面を見ないままに指先を画面に置いたのだが、途切れた着信音の後に漸く画面を見たのか「あ、待って」と独り零す。


「ちょっと電話してもいい?」

「うん。どうぞ、私の事は気にしないで」

「ありがと」


話を聞いてしまうのも悪いので気持ち彼から離れて、電話が終わるのを待つ事にする。