でも別に私に見せつけに来ているわけではなくて。

あの日以来、一際目立って落ち込む私と、パッタリ姿を見せず連絡すら取れなくなった御園生さんを心配して、何かあったのかと菅谷さんと八木さんが、聞きに来たのが、10日前。

半ば強制的に、あの日の事を話すはめになったのだけど。

それ以来、いつもの休憩時間には二人が顔を揃えてやってくるのだ。

でも、不思議。

御園生さんと私の理由が同じだと、どうしてこの二人には理解できたのだろう。

そう二人に尋ねると、

「御園生が、分かりやすく橘ちゃんに惚れてたから」と口を揃えてのたまった。

知らなかったのは、

気付かなかったのは、

私だけ?

「いやぁ、小幡は気付いてないんじゃない?私達の事だって絶対気付いてなかったよね?」

菅谷さんの言葉に返すように、ひときわ大きく溜め息を付いたのは菅谷さんの後ろに立っていた小幡さんだった。

「おまえら、職場で堂々といちゃつくんじゃねぇよ。見てるこっちが恥ずかしいわ」

手にはやっぱり、紙コップのコーヒーで。

なんだか、私達の溜まり場みたいだ。

「まだ連絡ないの?」

小幡さんが私に聞いた。

黙って首をふる。

「小幡は知らねぇの?アイツの行き先」

八木さんが尋ねると、小幡さんは「んにゃ」と首をふった。