御園生さんには好きな人がいるけれど、今その『好きな人』よりも近くにいるのは自分なのに……そう思う一方で、

彼から離れなきゃ。

彼が『好きな人』とうまくいくように、八木さんと菅谷さんの時のように、協力しなきゃって思う自分もいて。

でも、いつも御園生さんの優しさに縋っていた。

本当に狡い。

八木さんと菅谷さんが付き合うことになって……分かっていたけど、いざ本当になると……胸どれだけ痛いんだろうって思ってだけど。

案外平気だったのは、

一人で泣かずにすんだのは、

御園生さんがそばにいてくれたから。

ううん。

そばにいてくれたのが、御園生さんだったからだ。

バカだ、私。

私の中で御園生さんは、とっくに特別だったんだ。

その事に、たった今気付くなんて……。

こんな風に、御園生さんを傷つけ、苦しめた後に……。






「…………帰れ」

絞り出すような彼の声が聞こえた。

御園生さんは私から離れて、フラリとソファーに倒れ込んだ。

本当は帰るべきだった。

彼をこれ以上傷付けないために。

でも、出来なかった。

最低の人間だった。

私は…………。