知らなかった。

御園生さんの気持ちに、気づきもしなかった。

ただ、彼が与えてくれる優しさに甘えていただけ……。

どうして?

好きな人がいるって聞いてた。

だから、私のことなんて放っておいて欲しかった。

私とのことで、その彼女に誤解されたらどうしようって、ずっと気になってた。

同情だって気付いてた。

でも、狡い私は彼の同情という優しさに甘え続けてきた。

いつからだろう。

その優しさに甘えている自分が酷く情けなく思えた。

今日、連れ出してくれたこともお土産くれたことも、本当はすごく嬉しかった。

でも段々苦しくなっていった。

あの女子大生達と楽しそうに話す御園生さんを見たとき、 彼にふさわしくない自分の姿を見たとき逃げたくなったのは……

あの時私の中で渦巻いていた感情の正体は……。

嫉妬だった。

『御園生さんには好きな人がいる』

分かっていた。

でも、今彼のそばにいるのは、他の誰でもない。私なのにって……。