「本当に本当にすみませんでした」

あたしは彼に向かって深々と頭を下げた。
気持ちは土下座をしているも同然だ。

「もういいよ。済んだ事だし」

彼は心底怒っているという感じはなく淡々とした口調で言っている。

いつまでも頭を下げているわけにもいかず、頭を上げて彼の顔を見ると、明らかに迷惑がっている感じはしなかった。

「良かったコーヒーでも飲んで行かない?」

「いや....でも」

「いいから気にしないで。とりあえず顔でも洗っておいで」

彼の優しい口調につられるかのように、あたしは洗面所へ向かっていた。