驚いて、思わずその手を引こうとしたのに、楓くんはそれを許してはくれない。
そして何も言わず、わたしに整理する時間も与えてくれず……。
そっと、腕を引かれて、
包み込むように、ギュッと抱きしめられた。
「か、楓……くん……?」
名前を呼ぶと、さらに強く抱きしめられた。
わたしは、抱きしめ返すことができず、
戸惑ってばかり。
「……いま、俺が言ったこと聞いてました?」
「……っ、」
「先輩すごく鈍感だから。もしかしたら変なふうに捉えられてるんじゃないかなって。
ちゃんと伝わりました?それとも、ストレートに言ったほうがいいですか?」
ダメだ……。
軽くパニック状態になっている。
いや、軽くどころじゃない……。
胸の騒がしさを何度も抑えようとしても、
なかなか抑えられない。
それどころか、さっきの楓くんのセリフが頭の中で繰り返し流れていて……。
さらに、わけのわからない状態になっていく。