ずっと窓の外を見ていた、楓くんの視線がわたしのほうに向いた。
「みんな同じじゃないんだなーって。雛乃先輩みたいに作られた感じがなくて、純粋な人もいるんだなって。当時は雛乃先輩の内面とか知らないくせに、何言ってんだって感じですよね。
だから、すごく興味湧いたんです。
たぶん俺……その時、雛乃先輩に……」
ずっと、止まることなく話していた楓くんが急に口を閉じてしまった。
すると、こちらを見ていたのに目線を外して、自分の髪をくしゃっとしながら照れた様子が見えた。
「俺ってすごい単純なんですよ」
「……?」
「たった一度だけ見た……
雛乃先輩の笑顔に一目惚れしたから」
……ドクッと、心臓が大きく跳ねた。
と、同時に、もう一度いま楓くんが言ったことを頭の中で整理する。
今のが、もしわたしの聞き間違いでなければ……。
あわてて、軽くパニックになるわたしの手の上に、楓くんの大きな手のひらが、ゆっくりと重なってきた。