「けど、人見知りだからそう言われても、なんて返したらいいかわからなくて。下を向いたまま、何も言えなかったんです。そうしたら、雛乃先輩がいきなり俺の顔を覗き込んできたんですよ」


「え……あ、そうだっけ……?」



ダメだ、なんでわたしの記憶はこんなに曖昧なのかな?


変なことは覚えてるくせに、自分にとって都合の悪いことは忘れる頭になってしまっているのかもしれない。



「その時に、初めて先輩の顔をはっきり見たんです。それで衝撃を受けたんですよね」


「え……。そ、それはどういう意味で?」



顔を見て衝撃を受けるってことは、
かなり変な顔をしていたのかもしれない。


当時の記憶がかなり薄いわたしは、ヒヤヒヤしながら楓くんの次の言葉を待つ。


すると、楓くんは落ち着いた声音で言った。



「……こんなに笑顔が綺麗な人いるんだって」