今の楓くんしか知らない人からしたら、
昔の楓くんのことは想像できないかもしれない。
もしかしたら、楓くんなりに何か変わるきっかけがあって、今の素敵な楓くんがいるのかもしれない。
すると、窓の空を見ながら、
楓くんの横顔が優しく笑った。
「たぶん……雛乃先輩に出会ってなかったら俺、なんも変わってなかったかもなーって」
スウッと一呼吸置いてから。
さっきまで空を見ていた楓くんの目線が、
隣にいるわたしに向いた。
そして、いつになく真剣な顔で言った。
「俺が変わろうと思ったきっかけは、ぜんぶ雛乃先輩の存在があったからですよ」
「……え?」
わたしが……きっかけ?
それってどういうことって聞こうとしたら、
楓くんはそのまま話し続けた。