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わたしはいったん家の中に入り、
最低限の身支度を済ませて、楓くんと歩いて、ある場所へと向かう。



「先輩の私服って新鮮ですね」


隣で並んで歩いていると、楓くんがわたしを見ながらそう言った。



「え、あ……急いで選んだ服だからあんまり可愛くなくてごめんね」


クローゼットを開けて、いちばん最初に目に飛び込んできたものをチョイスした。



薄いピンク色のワンピース。
白の襟と袖に、刺繍が入っているデザイン。


髪の毛もボサボサだったから、簡単にツインテールにしてきただけ。



ワンピースってスポッと被るだけで、楽だし、おしゃれに見えるから好きなんだよなぁ。


だから、私服はよくワンピースを購入することが多かったりする。



「可愛くないなんて俺ひと言も言ってないのに。むしろ似合いすぎて直視できないですよ」


ハハッと笑いながら、サラッと言った。
ほんとに楓くんは口が上手いなぁと。