「コーヒーでいいか?」

「あっ…。ありがとう。安原くんっておっかない人かと思ってたけど優しいんだね。」

「お前にだけだよ?」

「嘘つきねー。安原くんは。だから雛子にも怨まれるのよ?」

「はは…。」

日向は思ったより物言いのはっきりした素直なお嬢さんのようだった。
しかし水越とは…。

俺の中の水越のイメージはすかしたイケメン眼鏡ヤローってとこなのになー。

でもあの人たまにサッカーに付き合ってくれるしいい人かもな。

「河崎先生って美人よね。わかるよ。私も男の子だったら好きになってたかも。」

「でもオバハンじゃん。」

「それ好きな人に言う台詞かしら。」

「もーいいの!結婚するらしいしさ。」

「あ…!知って……えーっ!!!!!???ウッソー!!!???」

なんだ今のは。

「俺は元々日向みたいに綺麗な片想いって感じではなかったしいいんだよ。ただ美人だなーとか思ってただけだし。」

「でも安原くん雛子と付き合ってても心ここにあらずって感じに見えたけど。」

「いや…。そうかなあ。」

「第三者の目からだから気にしないでね。」
「おう。…そんで日向はなんてフラれたの?」

「んー。なんか『俺はオヤジだしお前には年頃の男の子が合ってるよ。』って。」

「キツいなぁー…。」

「そうねえ…。」

少し沈黙が流れる。

公園の池の水面に映る月が波に揺れててジョーチョテキだなと思った。

「ねえ、安原くんは………「やめてくださいっ!!!!!!」

「!?」

いきなり叫び声が聞こえて二人して辺りを見回す。

「なんだぁ…?」

「なんか今の声河崎先生の声じゃなかった!?」

河崎?いやまさかそんなうまくできすぎた偶然ないだろ…?

「安原くんは左を探して!私は右の街灯溢れる明るい道を探すから!」

「あ、ああ。」

とりあえず走る。もしかしたら河崎かもとかそんなことも考えずにただ日向ってちょっとせこいんだなとか考えてたけど。