「はぁ～。不可抗力とはいえ、夜神を手加減なしで突き飛ばして来ちゃった……。」



夜神から逃れるため全力疾走したあたしは、屋根下の水飲み場までやってきた。



息を整えるためにひんやりとしたコンクリートの手すりにそっと手をつく…。



ふと周りを見てみると家族連れだろうか、親子が蛇口をひねって野菜を洗っている。


また近くではB組の男子達が水鉄砲を武器にはしゃいで遊んでいる。


その水しぶきはあたしの方にも届きそうだ。




夜神、あれから大丈夫だったかな？


頭とか打ったりしていなければいいけど…。




奴から逃げてきたのにそれでも夜神のことを心配してしまう。


でも、今は戻りたくても戻れない…！



だって、さっきからあたしの心臓はうるさいくらい鳴り止まないから…。



だけど、あんなふざけたことを言われただけなのに、何でこんなにもドキドキしているの！？



夜神がからかってくるのは、いつものことでしょ麻莉奈！


あたしはモテた経験が無いから……、だからあんな台詞を言われ慣れていないだけだよね！？



そうだよね、きっと！



その時さっきの、夜神の見せた少し照れた顔や無邪気な笑顔がふと胸に浮かんできた。



な、なんで、こんな時に思い出すのかな……？！



あたしはおずおずと胸に手をそっと当てた。




うっ…….。



今日って猛暑日なんじゃないの…？



やけに首から上が熱くて仕方がないんですけども！？



そんな体の異変についていけなくて戸惑っていると、近くでジャリっと音がした。



え……、誰？



まさか夜神！？



ドキッと強く早鐘を打つと、音がした方へ視線を向けた！